今回はこのような悩みに答えていきます。
- 電気工事の墨出し作業
本記事では電気工事で行う「墨出し作業」について解説しています。
「墨出しってなに?」
「具体的なやり方を知りたい」
こういった人向けの内容になっています。墨出しは、全ての工程において基準となる大切な作業。「正確な墨出しが出来る=仕事がデキる」といっても過言ではありません。
この記事では、墨出しの基礎知識〜状況別の手順を徹底的に解説しています。知識を習得し、現場に活かしていただければ幸いです。
墨出しとは?
墨出しとは仕上げ工事の前に、建物の柱の中心線や床・壁の仕上げ面の位置など、様々な場所に基準となる線を記すことです。
最終的な仕上がりに影響する重要な作業で、2つのポイントがあります。
- 図面を読み解くチカラ
- 正確な寸法を出せる技術
図面を読み解くチカラ
墨出しをするためには図面を読み取るチカラが必要です。なぜなら、図面通りに施工をしなければいけないから。
図面を読み解くには、基本的な図記号や寸法の計算方法などを理解する必要があります。この基礎が分かっていないと墨出しをすることは出来ません。
正確な寸法を出せる技術
墨出しをするためには正確な寸法を出せる技術が必要です。
上記の図面を読み解くチカラがあっても、それを現場に墨として出せる腕がなければ意味がありません。
地面に出す墨、天井に出す墨など場面によって様々な墨出し方法があり、それを上手く使いこなすことが大切です。
墨出しの方法(基本編)
ここでは墨出し作業の基本として「墨つぼ」の使い方を説明します。
墨つぼとは?
墨つぼはまっすぐな水平ラインの目印をつけるための道具です。使い方はシンプルで、2点のポイントを出し、朱墨の付いた糸を弾いて目印を付けます。
墨つぼの使い方
墨つぼの基本的な使い方を解説します。手順としては下記の3つ。
①カルコを挿す
②糸を伸ばす
③糸を弾く
墨つぼの使い方①カルコを挿す
カルコを挿せない場合は、2人作業で1人が補助をします。
墨つぼの使い方②糸を伸ばす
糸はできるだけ強く張ること。弱いと糸を弾いた時に朱墨が飛ばなくなる。(墨がうつらない)
墨つぼの使い方③糸を弾く
糸は地面に対して垂直に上げて弾くのが基本。斜めになると歪んだ墨になります。
墨つぼの構造や使い方はとてもシンプルですが、正確な墨出しをするには経験が必要です。たくさん使って、自分なりのコツを掴むことが1番の上達方法です。
Instagramに墨つぼに関する基礎知識をまとめているので、詳しく知りたい方はご覧ください。
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墨出しの方法(100切り)
墨出しのテクニック「100切り」について解説します。ミリ単位で正確に出すには必須の技術。
通常スケールの爪の部分(0mm)で墨を出した場合、数ミリの”あそび”が出来てしまうので正確な寸法は出せません。※0点補正移動爪で引っ掛け、押し当ての場合を除く
「100切り」とは、スケールの100mmの部分を起点として、出したい寸法の+100mmで墨を出す方法です。次から、具体的な手順を解説します。
長さ100mmの墨出しをする場合を例とします。
このように100切りで測ることで、爪部分を起点にするよりも正確に墨を出すことができます。
現場ではミリ単位でこだわる作業と、ある程度ズレても問題ない作業があります。
全てに100切りを使うと逆に手間がかかる場合があるため、作業内容によって使い分ける判断も必要です。
墨出しの方法(地墨)
まず下図を御覧ください。
中央部分のダウンライトの墨出しを例とします。
①第1ポイントを出す
まず「返り墨(かえりずみ)」と呼ばれる、柱から一定距離を離して記された墨を基準に寸法を測ります。
図では1000mm返りなので、そこにスケールの1000mmを合わせ4000mmの位置にポイントを”2点”出します。
2点を墨つぼでラインを引き結びます。
②第2ポイントを出す
第1ポイントと同じく返り墨を基準にダウンライトの寸法を出します。
返り墨(1000mm返り)にスケールの1000mmを当て2000mmの位置にポイントを”2点”出します。
2点を墨つぼでラインを引き結びます。この中心点が図面で記されたダウンライトの位置です。
墨出しの方法(天井下地)
天井の下地、つまり石膏ボードを貼る前の墨出しについて解説します。下図は天井下地の現場の状況です(見やすくするため簡素化しています)
まず、地墨にレーザー墨出し器を合わせ、天井面に墨を移します。ここでは100φ(直径100mm)ダウンライトの墨出しを行います。
①ダウンライトの芯を出す
レーザー光の当たっている下地部分にマーキング。
②縦ラインの墨を出す
ダウンライト100φに対して両サイド25mmの余長を見た150mmで墨を出す。※実際は真下ではなく下地の側面に書きます
③横ラインの墨を出す
縦と同じ要領で横ラインにも墨を出す、これで完了です。
下図は器具が下地に当たる場合です。
このような場合、当たる部分の外側の下地に墨を出します。下図を御覧ください
下地の当たる部分には斜線を引いて、ひと目で分かるようにしておきます。(追加でビニルテープを吊るすように巻いておく)
上図のように当たる部分を下地を組む軽量屋さんが切断〜開口補強をすることで、器具が収まる状態になります。
墨出しの方法(点検口)
「点検口の墨出し」は四角形の墨を出すということ。簡単な図を使って説明していきます。
①地墨にレーザー墨出し器を合わせる点検口の開口サイズ450mm角を例とします。(450mmの正方形を書く)
注意点は、壁に対して平行にレーザー墨出し器を置くこと。地墨が正しくてもレーザー墨出し器の置き方が曲がっては意味がありません。
必ずスケールでレーザー光が壁と平行になっているか確認しましょう。
②縦ライン4点のポイントを出す
レーザー光の中心から450mmの半分、つまり225mmを振り分けてポイントを4点出します。
この際芯(レーザー光)から両サイド250mm以上離しておきます。(グレー範囲の外側)
③横ライン4点のポイントを出す
縦ラインと同じ要領でポイントを出します。注意点は、最初に出した縦方向のポイントより外側に出すこと。(グレー範囲の外側)
④レーザー墨出し器を離す
レーザー墨出し器を離します。理由は墨つぼを使う際、朱墨(しゅずみ)が本体にかからないようにする為。
⑤墨つぼで墨を打つ
墨つぼで8つのポイントを結びます。四角形に墨を出した後は必ずスケールを当て、450mmの四角形になっているか確認してください。※正確に測るため”100切”で見ること
⑥マーカーペンで表記する
マーカーペンでわかりやすいように四隅を書き、電気の点検口とわかるように表記しておきます。これで点検口を取付けるボード屋さんは、どこの業者の点検口の墨なのかが分かります。
先ほど手順で下記の注意点がありました。
・横のラインから両サイド250mm以上離す
・横方向のポイントは縦方向の外側に出す
これを守らなかった場合が次からの図です。
①縦ポイントが横ライン250mm以内
②横のポイントが縦ラインの内側。
この状態で墨出しを行うと下図のようになります。
8つのポイントが結びつかず四角形になりません。この場合、墨の打ち足しが4回必要になります。
まとめ
- 墨出しは図面を読むチカラ、正確な寸法を出す技術が必要
- 100切は、100mm起点と出したい寸法+100mmで測る技術
- 地墨出しは基準墨を起点に寸法を測る
- 下地の墨出しは、余長で器具+50mm
- 下地が当たる時は、斜線+ビニルテープで分かりやすく表示する
- 点検口の墨出しは真四角+表記で正確にわかりやすく表示する
- 点検口サイズより広い幅でポイントを出す
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