今回は「カッターナイフ」をテーマに解説していきます。
本記事を読むことで分かること
- カッターナイフの基礎知識
- カッターナイフの用途
- カッターナイフはどれを選べばいい?
- カッターナイフの豆知識
記事の信頼性
私は現役の電気工事士で「職人」と言われる立場で現場でモノづくりをしています。
電気工事に興味のある方や新人さんに向けで役立つ情報をお届けします。
電気工事の作業においてカッターナイフは無くてはならない工具です。本記事ではカッターナイフに関する基礎知識から現場の使用方法まで分かりやすく解説していきます。
カッターナイフの基礎知識
電気工事で扱うカッターナイフには下記のような特徴があります。
- サイズ
- ロックタイプ
サイズ
カッターナイフは刃のサイズによって用途が異なります。下記は代表的な4つのサイズです。
- 特大H型刃(推奨)
- 大型刃(推奨)
- M厚型刃
- 小型刃
名称 | サイズ | 刃厚 | 特徴 |
特大H型刃 | 25mm | 0.7mm | 刃が厚く反りが少ない ハードな作業にも対応 |
大型刃 | 18mm | 0.5mm | 紙からベニヤ板まで幅広い用途に対応 |
M厚型刃 | 12.5mm | 0.45mm | 小型でも大型刃クラスの刃厚で耐久性アリ |
小型刃 | 9mm | 0.38mm | 紙などの薄物に対応 |
上記の表からおすすめなのは「大型刃」「特大H型刃」になります。
理由は強度と持ちやすさです、大きいサイズであるほど使用の安定感がありある程度の負荷にも刃が耐えることができます。
一方で小型のサイズは繊細な作業には向いている反面、力を入れた使い方が難しくなります。
ロックタイプ
カッターナイフには刃を固定するためのロック機能があります。
- オートロック式(推奨)
- ねじ式
オートロック式
オートロック式はワンタッチで段階的にロックできるのが強みで、現場で使う場合はコチラがオススメです。
何故ならカッターナイフを使う際は、刃の先端だけでは無く全体を使う場面が多いからです。手軽に任意の長さまで刃を調節出来るオートロック式は、サッと取り出しサッと使えるのが最大のメリットです。
ねじ式
ねじ式は刃を強く固定出来るのが強みで、チカラを強くかける作業に向いています。電気工事では、チカラをかけて刃物を扱う場合は電工ナイフに切り替えて使い分けることが多いので、あまり持っている職人は少ない印象です。
ねじ式は「緩めて刃を出して締める」のひと手間が、持たない一番の理由です。
カッターナイフの用途
ケーブルの被覆剥き
カッターナイフのメインとなる使用方法です。
主に丸形ケーブル(VVRやCVケーブル)の外装を剥く際に使用します。
特に使用頻度が高いのが照明制御等で扱われるCPEVケーブルの被覆剥きです。
その理由はケーブルが細く繊細な作業が要求されるからです。この作業は刃が太く大きい電工ナイフでは中々うまくはいきません。
カッターナイフと電工ナイフの大きな違いは「刃の強度」で、下記のような使い分けが理想です。
- カッターナイフ→繊細な作業
- 電工ナイフ→チカラを使う作業
電気を流す元となる「幹線」で使うケーブルは太いものでCVT100sq以上になり、カッターナイフでは被覆が硬すぎて奥まで刃が届きません。例え届いたとしても不用意なチカラが入ったり、刃が折れたりして非常にキケンな作業になってしまいます。
一方、電工ナイフであれば強い力をかけても折れることはなく使用することができます。低圧幹線、高圧幹線ともに推奨されるのは電工ナイフを使った施工です。
このように状況によって使い分けることがポイントです。
その他の雑作業
カッターナイフには下記のような雑作業に使います。
- ダンボールの梱包ばらし
- 薄いモノを切る(養生シート等)
- ヘラの代用(コーキング作業等)
ちょっとした時にサッと取り出して使える刃物といった印象で、工夫次第でもっと用途は広まると思うので色々試してみるのもアリです。
オススメのカッターナイフ
カッターナイフを扱う主なメーカー
- OLFA(オルファ)
- TAJIMA(タジマ)
- MARVEL(マーベル)
- DENSAN(デンサン)
ラインナップの多さではダントツの「OLFA」が現場では愛用している職人さんが多いです。
定番のカッターナイフ【おすすめ3選】
【OLFA】オートロック式大型カッター
- オートロック式
- 大型刃替刃
- カートリッジタイプ
MAX6枚まで刃を内蔵できるカートリッジタイプが最大の魅力。電気工事の作業は刃先だけではなく、刃を長く出して全体を使う場面が多く消耗がとても早くなります。
切れなくなった刃をその場でスグに交換できるのは、作業効率や安全面からみてとても魅力的です。
【タジマ】ドライバーカッター
- 高強度の刃
- オートロック式
- 替刃2枚まで収納可能
硬い刃が特徴で刃先をドライバーの様に回して使うことができます。実際ドライバーとして使うことは無いにしろ、強度のある刃は多少負荷のある作業でも耐えることができるので結果として替刃を交換する頻度が少なくなるコスト面で優秀なカッター。
【OLFA】カッター挽き回し鋸
- 挽き回し鋸+カッターナイフ
- オートロック式
- 握りやすいグリップ
ボード開口作業で扱う挽き回し鋸と一体になったカッターナイフ 。内装工事がメインでボード開口が多い場合はとても役に立つハイブリッドな一本です。
挽き回し鋸→ボード開口、微調整→カッターナイフ、といった具合に切り替えながら使うことができます。
カッターナイフの豆知識
替刃の種類(主要2種類)
通常刃
通常刃は切れ味、耐久性ともにバランスの取れた性能になっています。恐らくあまり刃にこだわっていない人はこのタイプを使っていると思います。特にストレス無く使うことができるスタンダードな替刃です。
黒刃
黒刃は切れ味に特化した性能を持っていて繊細な作業が多い方にとって役立つ替刃です。ただ切れ味に特化する分、耐久性が落ち交換頻度が多くなるのがネックです。その場合、カートリッジ式のカッターナイフで交換作業をカバーできれば鬼に金棒の組み合わせです。
使用する際に気をつけること
カッターナイフは便利な半面、危険が多い工具です。現場での使用上の注意として下記の3点があります。
- ケガに注意
- 刃の交換
- 使用禁止の現場ルール
ケガに注意
現場でケガを防ぐコツは、ケガをしないように気を付けるよりも「ケガをするイメージ」を常に持っておくことが大切です。
「この体勢だと指切るかも」
「この方向で力かけると大怪我になる」と言った感じ。
どうすればケガになるだろう?と一呼吸おいて考えることで安全意識が身につきます。— でんちゃん@電気工事✕情報発信 (@denchan_ew) November 21, 2021
カッターナイフは電工ナイフとは比べ物にならないくらいの切れ味を持ちます。現場で扱う際には一般的に事務作業で使うような軽い作業では無く、時には両手を使ってチカラをかけるような場面が多くあります。
一歩間違えれば大量の出血を伴う大事故になり、扱いには細心の注意が必要です。具体的には、刃の流れる方向に体を置かないことが基本の使い方になります。
急いでいたり焦ったりしていると、無意識に危険な体勢になっていることがあるのでカッターナイフを扱う際は常にケガのイメージをしておくことが大事です。
刃の交換
カッターの刃は常に新品状態にしておく。
切れ味の落ちた刃でケガした場合①必要以上の力で深いキズになる
②ボロボロの切断面でえぐったキズになる完治までにかなり時間がかかる大怪我に繋がります。
現場は事務作業のような軽微な用途ではないのでカッターは危険な工具の認識を持つことです🧐— でんちゃん@電気工事✕情報発信 (@denchan_ew) November 21, 2021
カッターナイフの替刃はケチらずに使うことが大事です。その理由は作業の効率と安全面です。切れ味の落ちた刃で作業した場合、通常の倍以上の力を込めることになります。
その状態で身体を切った場合、力を入れすぎたことによる深いキズと、ボロボロになった替刃の切断面でえぐった様なキズになり大怪我になってしまいます。
カッターナイフの替刃は消耗品、少しでも切れ味が落ちたら即交換。これが鉄則です。
使用禁止の現場ルール
「現場ごとのルール」
建築現場には現場独特のルールがあります。
例えば
・踏み抜き防止インソール着用
・カッターナイフ使用禁止
・切創防止手袋着用…など厳しい所ではルールを破った場合は全体周知回、
ケガをすると更に厳しい規則がつく場合あり。
現場が変わるごとに確認するのが鉄則です😌— でんちゃん@電気工事✕情報発信 (@denchan_ew) November 21, 2021
ケガが多いカッターナイフは現場によっては使用禁止のルールを設けている場合があります。私の経験上、大手サブコンにはその傾向が強い印象です。
カッターナイフに限らず、その現場ごとの特殊なルールがあるので使用する際には確認を取るといいでしょう。
現場ルールを守らず見つかった場合、全体周知回などの厳しい措置をとられる場合があり。一人の行動が全体の工期を遅らせる、といった影響も与えるので注意が必要です。
まとめ
- おすすめは大型刃以上&オートロック式
- ケーブル被覆剥きが主な使用用途
- CVTなど太いケーブルは電工ナイフを使う
- 迷ったらOLFAオートロック式カッター
- 通常刃と黒刃2種類の替刃がある
- 一般的な事務作業とは違いカッターは「危険な工具」の認識
▼本記事で紹介したカッターナイフ