今回はこのような悩みに答えていきます。
本記事を読むことで分かること
- ペンチの基礎知識
- ペンチの用途、使い方
- ペンチのメーカー紹介とおすすめ
- ペンチを使った心線の輪作り
記事の信頼性
現役の電気工事士です。
本記事では電気工事士が使う「ペンチ」について解説しています。
現場作業に特化した電工さん向けの解説になっています。
電工用ペンチは現場の電工職人には欠かせない工具の一つです。
新人電工さんからベテランさんまで役立つ内容になっているので、ぜひ最後までお付き頂けると幸いです。
ペンチの基礎知識
切断能力
ペンチの切断能力は基本的に電工ニッパーよりも優れている場合が多く、ケーブルから鉄線やピアノ線まで幅広く対応しています。
ただ注意点は先端の奥まった部分に切断刃があるため、ニッパーのように刃先を使った細かい作業は出来ません。
先端形状
先端はペンチの大きな特徴で、この部分を使って掴む、捻る、回す、といった作業が可能です。形状は上記画像のギザギザタイプが主流で、この溝を上手く利用することで心線の輪作りをすることが可能です。
一方で網の目タイプは先端で挟んだ際の接触面が広い分、喰い付きの力が強い。その分、溝を使って心線の輪作りが出来ないため傷付けてしまうことがあります。
サイズ
ペンチのサイズに関しては160mm〜210mmが一般的な大きさです。
特徴としては下記のとおりです。
- 大きいサイズ→テコが効きやすく切りやすい
- 小さいサイズ→小回りが効き扱いやすい
ペンチの大きさは使う人の手の大きさによっても使い心地は変わるので、一概にどれが正解とは言い切れませんが参考程度に。
ペンチの用途
電気工事士が使うペンチには下記の用途があります。
- ケーブルの切断、皮剥き
- 掴む・引っ張る・捻る
- 心線の輪作り
ケーブルの切断、皮むき
VVFケーブルやCVケーブル等を切断する際に使用します。
電工ニッパーと比べられることが多いですが、基本的にはペンチの方が切断能力が高い場合が多いです。IV等の絶縁被覆の皮剥きも出来る点も電工ニッパーと同じ用途です。
ケーブルを扱う用途に関しては、電工ニッパーがメインの人もいればペンチがメインの人もいるので好みによって使い分けていいと思います。
掴む・引っ張る・捻る
ペンチ先端のくわえ部分を使って掴む・引っ張る・捻るなどの作業ができます。
例えば何かモノをまとめて縛る際にIV線を使うことが多いですが、これをペンチを使って引っ張りながら回して締め付けます。
これはニッパーでは出来ないし(挟むと切れる)、似た用途の工具でウォーターポンププライヤーがありますがこれでは出来ません。
「掴む・引っ張る・捻る」作業はその時の判断で変わりますが「この場面ならペンチが役立つ」という意識を持っておくと応用が効いた使い方ができます。
心線の輪作り
電気工事でペンチを使う際、電線の心線を「の」の字に曲げて端子台に結線するテクニックがあります。詳しい手順については後ほど解説します。
ペンチを取り扱うメーカー紹介
電気工事士が使うペンチの主なメーカーは下記のとおりです。
- 室本鉄工(メリー)
- マルト長谷川工作所(ケイバ)
- フジ矢
- ビクター
- クラインツール
- クニペックス …etc
各メーカー様々な種類のペンチが出ています。
ペンチを選ぶ際は先述した切断能力・先端形状・サイズの3つのポイントを参考にして下さい。
又、ペンチのラインナップが特に多い「フジ矢」についてはInstagramの投稿でオススメをまとめているのでコチラも参考に。
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おすすめペンチ紹介
▼上記Instagramで紹介したおすすめペンチ
ペンチを使った心線の輪作り
ペンチを使った心線の輪作り方法を解説していきます。
🔽ペンチを使った輪作り方法
輪作りの基本となる方法です。
①ニッパーより傷付きにくく安定する
②工程は多いが慣れれば問題なし
③技能試験の推奨方法まず初心者の方は、この方法をマスターしてから
色んな作り方を試すといいです😌 pic.twitter.com/lNIHMANQdt— でんちゃん@電気工事✕情報発信 (@denchan_ew) August 12, 2021
心線の輪作りをする手段はいくつかありますが、ペンチを使った方法は最も基本になるので確実に覚えておきたい所です。
①絶縁電線を剥く
絶縁電線を剥きます。目安としては50mm以上がオススメ。あまり短く剥くと曲げられなくなるので注意です。
②首を作る
輪っかの「首」の部分を作ります。ペンチ先端のギザギザの溝に挟むのがオススメ。
この首がない輪っかだとネジ止めの際に絶縁被覆をネジに噛ましてしまい施工不良になってしまいます。約2mm程と表記していますが短か過ぎても長すぎても駄目なので慎重に。
③クランプの形を作る
心線を挟んだもう片方を曲げてクランプ状にします。この時、①の心線の剥きが短いと曲げにくいので出来るだけ長めにしておくこと。
又、この段階でスライドしてクランプの幅を広げることで最終的な輪っかのサイズを大きくすることができます。現場では様々な大きさの輪作りをすることになるので調節方法に慣れておくことが大切です。
④心線の切断
ペンチの切断部分を押し当てて心線を切断します。
この際ペンチの溝になっている部分が残り、少し曲がった部分が出来ますがこれが正解です。この曲がりがキレイな輪を作る為に必要な部分になります。
⑤心線を曲げる(1回目)
心線をペンチ先端の半分くらいで挟み、手首を返すように曲げます。
上記画像のような形に曲げられればOKです。この曲がりが甘いと歪んだ輪になってしまうので慣れるまで練習が必要です。
⑥心線を曲げる(2回目:完成)
ペンチ先端の角で心線を挟み、手首を返しながら曲げます。
一回目の曲げとは手首の方向が逆になる為、一度ペンチを持ち変えるのがコツです。
手順⑤と⑥は一番練習が必要になるので感覚を掴むまで繰り返し練習です。
※やってはいけない心線の輪作り
心線の輪作りは慣れるまで練習が必要な技術です。
正しい方法で作らないと施工不良になり、重大な事故を引き起こす可能性があります。
また電気工事士の技能試験でも欠陥になるパターンがあるので注意が必要です。
下記インスタグラム投稿にて心線輪作りの欠陥例をまとめているので、参考にしてみて下さい。
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まとめ
今回の記事をまとめます。
- 切断能力・先端形状・サイズで選ぶ
- 掴む・引っ張る・捻る作業に最適
- おすすめメーカーはフジヤ
- ペンチを使った心線の輪作りは基本
▼今回紹介した電工用ペンチ