こういった疑問に答えます。
本記事のテーマ
電気工事士の腰道具について解説
記事の信頼性
記事を書いている私は、現役の電気工事士です。
第二種電気工事士、認定電気工事従事者、第一種電気工事士の資格を取得。
大型ビルの新築工事、テナント入居工事、改修工事等をメインに仕事をしています。
電気工事の施工をする”職人”の目線で有益な情報をお届けします。
本記事では「電気工事士の腰道具のことについて知りたい」電気工事に興味のある方、又は電気工事士初心者の方に向けて書いています。
この記事を読むことで次の事が理解できるようになります。
- 腰道具の基礎知識
- 具体的な工具の種類
- よくある疑問点
私が新人だった頃は、右も左もわからなくて
「腰道具について、何が良くて何が悪いのか」を理解するのに相当の時間を使いました。
今までの経験と知識をお伝えすることで、腰道具への理解の早道となれば幸いです。
腰道具の基礎知識
腰道具の基礎知識3つのポイントを解説していきます。
①腰道具の特徴
②腰道具の仕組み
③腰道具の注意点
①腰道具の特徴
作業をする上で必須の「腰道具」
作業する上で以下のメリットがあります。
- 使用頻度の高い工具を持ち歩ける
- 両手がフリーになる
- 自由にカスタマイズできる
使用頻度の高い工具を持ち歩ける
腰道具の最大のメリットは、使用頻度の高い工具を常に持ち運べる事。
腰道具専用のベルトに「工具差し」を装着し、必要な工具をセットすることができます。
電気工事士なら作業に必ず必要になる「ペンチ」や「ドライバー」等を常に持ち運ぶ事ができ、すぐに取り出して使用することができます。
両手がフリーになる
腰道具はその名の通り、腰に道具をセットした状態。
必要な時にだけ工具を取り出すのでそれ以外は両手がフリーの状態になります。
特に高所作業においては、工具を持ちながら材料を運んだりするのは非効率で危険。
両手が常に使える状態というのは安全性の面からとても大切な事です。
自由にカスタマイズできる
腰道具は自分の作業に合わせた工具選び、効率化を最大限活かす工具の並べ方などカスタマイズ性に優れてます。
腰道具は人によって使う工具の種類も数も十人十色。
色んな工具を装備してどんな場面にも対応できるようにする人もいれば、最低限の工具で軽量化し腰に負担がかからないようにする人もいます。
②腰道具の仕組み
下図は腰道具の一例です。
腰道具の例
工具を収納するホルダーと腰袋を腰ベルトに装着します。ホルダーは工具によって専用の大きさがあるので、付ける工具の数だけ揃える必要アリ。
腰袋にはホルダー以外の小物を収納しておきます。
工具のセット順
基本的な工具の並びは利き手の方からセットします。例えば右利きの場合、右側から一番使用頻度の高い工具をセットし、次いで優先度の高い工具を左側からセットします。
上図は工具のセットする優先度を図解したものです。
どの工具を優先するかは個人差があるので、あくまで参考程度に。
③腰道具の注意点
腰道具には下記の注意点があります。
- 状況に合わせた工具選び
- メンテナンス
- 腰への負担
状況に合わせた工具選び
使用頻度の高い工具を装備するのは基本ですが
カスタマイズ性の高さから色んなパターンのセットを考えておきましょう。
例えば「メインセット+〇〇」といった感じ。
ホルダー以外にもカラビナを使って、小物系の工具を持つこともできます。
具体例として下記の様に、状況に合わせた工具を選びます。
・締め作業→「ドライバー、ソケットビット」
・全ネジボルトを扱う→「全ネジレンチ」
・ケーブルを扱う→「ケーブルストリッパー」
メンテナンス
腰道具は常にベストコンディションを保っておきましょう。
特に雨や泥にさらされてしまった場合、一気にサビが発生します。
メンテナンスには、呉工業のKURE 5-56シリーズやグリースメイトの使用がオススメ。サビは工具に致命的なパフォーマンスの低下を招きます。
作業の効率化に直結するので、こまめにメンテナンスをしましょう。
腰への負担
腰道具の便利さに慣れてくると、あれこれとセットする工具が増えがち。
でも工具が増えるほど重量も増え腰に負担がかかってきます。
必要最低限の工具選び、状況に合わせて持ち歩く工具を変える等、しっかりと腰痛対策をすることが大切になってきます。
腰道具の解説まとめ
腰道具について大切なことは下記の通りです
- 使用頻度の高い工具を持ち、作業を効率化できる。
- 効率化を引き出すには、工具のセット順が重要。
- 定期的なメンテナンス、腰への負担も考えておく。
腰道具で使う工具
具体的に電気工事士の腰道具で使う工具を紹介していきます。
ニッパー
電気工事士の基本工具。
ケーブルを扱う場面、切断したり皮を剥いたりと言った作業が主な用途になります。細かい作業が多く、職人としての技量が必要になる工具。
腰道具の中では使用頻度が高く、利き腕側の近い位置に配置されてることが多いです。
ペンチ
ケーブルの切断、皮剥き、輪づくりなどこちらもケーブルを扱う作業で使用します。
ニッパーとの違いは挟んだり、加えて引っ張ったりと用途が幅広い。
ニッパーとセットで配置されることが多いです。
ドライバー(プラス・マイナス)
ビスを締める緩める作業に使用します。ドライバーを使う場面がとても多く消耗が激しいので、ボロくなっていないか状態をこまめにチェックしておくことが大事。
腰道具の中では、一番買い換える頻度が多くなります。
≫参考:電気工事士が使う「電工ドライバー」【おすすめ紹介もあり】
電工ナイフ
電工ナイフは「切る作業」に使用します。
具体的には、ケーブル外装の剥ぎ取りやPF菅の切断、梱包材をバラす場合などなど。作りが頑丈なので、力を込めて切る様なシーンでも活躍します。
腰道具につける場合は専用のホルスターが必要になります。
カッターナイフ
ケーブルの外装剥ぎ取りや梱包バラし、シート類を切る際などに使います。上記の電工ナイフと用途が似てますが、切れ味はカッターナイフの方が鋭くより細かい繊細な作業に使われることが多い。その反面耐久性は弱く、こまめに刃を交換する必要があります。
≫参考:【電気工事士】カッターナイフの基礎知識・おすすめ紹介
腰袋
腰袋は全ての業種の職人が身につけています。
業種ごとに最適化された形があって、電気工事士の場合は電工用腰袋を使用します。
電工用腰袋は小物が多く入るよう作られていて、収納力が高いのが特徴。
ウォーターポンププライヤー
金属管など径の大きいモノを回す場合に使用します。
腰道具の中では、それほど使用頻度は多くないですが掴む、回す、と言った作業には必須の工具。
≫参考:【電気工事士】ウォーターポンププライヤーの基礎知識・おすすめ紹介
電工ハンマー
電工ハンマーは通常のハンマーのように叩く用途のほかに「柄の部分がソケット状になっている」のが特徴。この柄の部分でナットを締め込むことができます。
スケール
寸法を測るための工具。モノの長さを測ったり、「墨出し」という工事の基本になる作業に必須です。
電気工事に限らず全ての職人さんが持っている工具で、それぞれに合った特徴のスケールを選ぶことが大切です。
≫参考:スケール(メジャー)の基礎知識【プロ厳選のおすすめ紹介アリ】
腰道具におすすめのメーカー
工具を揃える際、沢山あるメーカーから選ぶことになります。中でも定番になっているメーカーがあり下記の通り。
- 安価なもので揃えるなら
「デンサン」「マキタ」 - 高価なもので揃えるなら
「ニックス」「フジヤ」「タジマ」
これらは職人が愛用してる定番メーカーで、買って失敗することはほとんど無く高品質のモノばかり。
とはいえ、メーカー選びというのは「自分の好み」で決めても良いかなとも思っています。何故なら工具の「所有感」が仕事のモチベーションに繋がるから。
自分で調べつつお気に入りのメーカーを見つけていく。こういった出会いが腰道具を作る楽しみでもあります。
腰道具のよくある質問
ここからは腰道具についてよくある質問に答えていきます。
質問
腰道具一式を揃えるための金額はどれくらいかかりますか?
回答
本記事で紹介したメイン工具でセットを組んだ場合、金額を抑えたもので揃えたとして約4万円ほど。
工具やホルダーの値段はピンキリなので、こだわりを持つ人なら10万以上かかっている人もいます。
質問
腰道具の重さはどれくらいですか?
回答
平均的には5キロ辺り。
これは個人差やその時の作業状況によって付ける工具は変わります。メイン工具以外で小物を沢山セットした場合は、10キロ近くになる時もあります。
質問
メンテナンスはどれくらいのペースですればいいですか?
回答
腰道具のメンテナンスは、私の場合は週一回で、雨作業の日はその日の作業終了後です。
腰ベルト、ホルダー、腰袋などを含めた全部のメンテナンスは大型連休の間や長期の現場が終わったタイミングでやることが多いです。
質問
腰に負担がかかって腰痛が辛いです。
何かいい方法ないですか?
回答
腰に負担がかかっていると感じた時は一度工具を見直すといいです。
無駄に持ち歩いている小物工具は入っていないか、ゴミやいらないもので腰袋があふれていないか等・・
安価な腰ベルトだとクッション性が心許ないモノが多く、多少奮発してでも腰ベルトは高価なクッション性の高い製品を選んだ方が正解です。
普段からのストレッチ、マッサージもしっかりしておくことで腰痛は比較的抑えることができます。
質問
複数の現場を掛け持ちすることになりました、現場が変わるたびに腰道具を運んで出勤するのが辛いです。
回答
そんなときは2セット目の腰道具を作ることをおすすめします。
1セット目の腰道具はメインの現場に置いて、他の現場には2セット目の腰道具を使うといった感じ。
とはいえ、いきなり作るのは金銭的に辛いものがありますよね。
そんなときは新しい工具を買った時に、今まで使っていた工具は2セット目の腰道具にまわす。こうしてゆっくりと腰道具を作って行くといいですよ。
なので今使っているメインの腰道具を「後々はもう一つの腰道具に使う」という意識を持って、丁寧にメンテナンスしながら扱うことが大事。
さいごに
腰道具は作業効率を上げる大切な工具です。
でも、それだけじゃなく色んな職人さんの腰道具を眺めているだけでも楽しかったりします。
尊敬する人や先輩の腰道具のマネをして同じものを使ってみたり、同じ配置にしてみたり
何故その位置に付けているのか見たり聞いたり研究することで、さらに自分にあった腰道具に成長していきます。
▼電気工事士が使う工具を解説した記事